東京都手をつなぐ育成会 60周年記念誌

育成会 60周年記念誌


>> P.14

この10年の社会の流れと育成会Message東日本大震災の被害者を悼み、復興への祈りの中で東京都育成会が創立50周年を迎えてから約10年になります。社会が変化し、様々な出来事に遭遇する中で、私たちが何を感じ、考えながら歩んできたのかを振り返ってみます。●●障害者の権利擁護と差別のない社会をめざしてこの間、障害者を取り巻く考え方を最も大きく変えたのは、「NothingAboutUsWithoutUs私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」と謳った障害者権利条約です。わが国では2014年の批准に向けて障害者総合支援法、障害者差別解消法をはじめ、様々な国内法が整備されました。既に民営授産も法人化され、活動の主軸をどこに置くのか路頭に迷っていた当時の親の会に「権利擁護」という道標ができ、権利条約や新しい法律、また「合理的配慮」「社会モデル」などについての勉強が始まりました。更にこの頃、全国、都内の先進的な地域では、理解啓発活動を推進するキャラバン隊が誕生しました。●●津久井やまゆり園事件と命の尊厳このように共生社会を目指して歩き始めていた2016年、津久井やまゆり園事件に突然の衝撃が走りました。重度の障害者というだけで「生きる価値がない」と、むき出しの優生思想を突き付けられたのです。悲しみ、怒り、恐怖に襲われ、わが子と重なる不安は、誰しも言葉にすらできませんでした。命の尊厳について、皆、真剣に考えました。全国育成会久保会長からは事件発生の翌日、「安心して、堂々と生きてください」と本人たちに寄り添う声明文が出されました。たいへんな反響を呼びましたが、一方で謗中傷もあり、社会の根底に潜む目に見えない優生思想が顕在化されたかのようで、更なる悲しみを覚えました。全国誌「手をつなぐ」では特集を組み、笑顔いっぱいの写真で誌面を埋め尽くし、関わりの中で幸せに暮らしている障害者の姿を精一杯、世の中に伝えました。〜誰もがその人らしく生きることを願い続けて〜社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会副理事長東京都手をつなぐ親の会副会長永田直子014


<< | < | > | >>