東京都手をつなぐ育成会 60周年記念誌

育成会 60周年記念誌


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●●優生保護法裁判もうひとつの優生思想との闘いが、旧優生保護法の下に命の選別となる強制不妊手術を受けた被害者による裁判です。各地の当事者が勇気をもって声を上げ、国家賠償訴訟を提訴し、人の価値は能力や生産性の優劣ではないことを堂々と示し、世論を動かしました。苦しい裁判が続く中、2022年、大阪高裁と東京高裁でようやく救済への風穴が開いたのです。知的障害者のあるがままの尊さを思いつつ、より優れた力を求めてしまう私たち親自身の心の奥底に潜む優生思想と対峙しながら、育成会として、これからもこの裁判を見守り、応援していきたいと思います。●●コロナ禍での障害者の暮らし新型コロナウイルス感染症が世界に広がり2022年で3年目になります。「非日常」が私たちを困惑させましたが、急な予定の変更、居場所の制限、情報不足、生活様式の変化など、知的障害者にとっては「かつての日常」であり、もともと不自由であったことに気付かされます。この状況を受け入れ、淡々と暮らす本人たちの姿には、たくましさすら感じます。一方、親の会活動も行事や集会などが軒並み中止となる中、オンラインによる会議なども採り入れられるようになりました。活動が中断したからこそ見えてきた仲間の存在、人と人とのつながりのありがたさを、誰もが感じたことと思います。●●これからの10年に向けて今、ウクライナの惨状の中にいる障害者や子供たちのことを思い、胸がつぶれそうになります。また、コロナ禍の状況もいつまで続くのかわかりません。様々な困難の中にある人も、障害のある人もない人も、みんなの心の距離が縮まっていく社会になることを願わずにはいられません。わが子への思いと親同士のつながり、そしてたくさんの支えを励みに、誰もがその人らしく生きていけるように、育成会は歩みを続けてまいります。出典:(一社)全国手をつなぐ育成会連合会『手をつなぐ』2016年9月(727号)表紙・裏表紙・10頁・11頁015


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