東京都手をつなぐ育成会 60周年記念誌

育成会 60周年記念誌


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4事業〜コロナ禍の事業運営〜杉並育成園すだちの里すぎなみ施設長小林哲2020(令和2)年3月、千葉の北総育成園でのクラスターの報道は衝撃的でした。入所施設で働く者として、明日は我が身と心が休まることがない日々の始まりでした。障害のある方々にとっても、顔を合わせ、手と手の触れ合いを通してのコミュニケーションが減り、不安の日々の始まりとなりました。各施設が感染対策や物資調達に追われている中、法人本部に入居系施設の施設長が集まり、臨時コロナ対策会議が開かれました。そこで法人より事業継続は使命であり、感染の拡大を最小限に留めるBCPを整備することが示されています。各施設が隔離スペースを確保して施設内での感染拡大を食い止める方策を早急に協議し、BCPを作成。それを臨時コロナ対策会議で、さらに練り上げました。2021(令和3)年4月には法人からBCP整備の3か年計画が示されました。1年目に各施設のBCPを整備、2年目にエリア毎でBCPを整備、そして3年目にエリアでシミュレーションを実施し、BCPを磨き上げていく内容でした。各施設でBCPの整備に取り掛かり、さらに各施設が陽性者や陽性疑いの方への対応も積み上げながら、BCPは、より実践的なものへ更新されていきました。自粛期間が長くなると、利用者の皆さんの心身の健康も心配となりました。我々の施設では看護師や作業療法士と連携して、運動プログラムを取り入れて実施しました。オンラインクッキングやクイズ大会などの行事を企画し、自粛生活の中でも季節を感じ、行事を楽しめるよう工夫しました。第5波の収束が見えた頃から、施設は活動再開に向けたシフトチェンジを始めました。しかし、オミクロン株の出現により状況は急変します。濃厚接触者となった職員は出勤できず、各施設が支援体制を維持するための調整に追われました。さらに施設やグループホームでは感染が広がり、誰もがギリギリのところで事業継続をしていました。従来のBCPでは隔離スペースを使用し、感染拡大を最小限に抑える方針でしたが、オミクロン株の感染力は想定を超えるものでした。判明した時にはフロア内に感染が広がっており、用意していた隔離スペースを使用する前に、一つのフロア全体を閉鎖して対応せざるを得ない状況でした。ユニットタイプでない入所施設では、エリアを区分けすることが難しく、最終的にはフロア全体をレッドゾーンとして対応することになりました。複数名の職員が出勤できず、自力での事業継続が危ぶまれる施設もありました。そこでエリアの施設長理事やブロック代表施設長がエリアの各施設へ応援を呼びかけ、いくつかの施設から職員が応援に入っています。準備していたエリア連携が活かされた事例でした。強度行動障害のある方を受け入れている入所施設では、個別の対応が必要なため職員が何度も防護衣を着用し直す必要があり、物資が急速に枯渇しました。すぐに法人に呼びかけ、必要物資の応援をもらい、どうにか体制も維持して乗り越えています。保健所や医療機関の協力も事業継続を後押ししてくれました。保健所は入所施設の利用者の特性や建物の構造を理解し、根気よく入院調整をしてくれています。医療機関からの入院受け入れの連絡に、支援体制の確保に追われていた職員は何度も救われました。今後は施設からエリアへと連携を広めた法人の取り組みを、地域へと広げていきたいと考えています。施設や法人の地域貢献活動や平時からの顔の見える関係作りを通して、感染症、自然災害における地域での防災の取り組みについて連携・協働を進めていきたいと思います。〈恩方〉レッドゾーンシミュレーション〈すだち〉利用者説明用イラスト〈すだち〉レッドゾーン支援〈きよせ〉食事提供〈きよせ〉ガウン着用しての支援〈とぶき〉感染症物品保管状況078


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